自分自身の音楽を奏でる:『Always三丁目の夕日』ピアノのレッスン

音楽 ちいさな感動 おおきな感動

演奏には、
作曲者の思いに重ねて、
必ず、演奏者の心の内面にあるものが反映されています。

その曲に対する
「作曲者の思いを感じ取り演奏で伝える」ことは、
それと同時に、「その人自身」も必ず表現されているのです。

すると、同じ曲であっても、
演奏者の数だけの違う音楽が生まれることになります。

音楽の興味深いところですね!

作曲者の思いと自分自身が感じた音楽が
重なり合い、混じりあい、共鳴している

と感じて演奏することは、

「自分自身の音楽が表現できた!」
と実感することになり、
心がおおきく感動する瞬間です。

音を奏でている自分自身が、
豊かに彩られていくように感じられ、
音楽を学んでいることの充足感、幸福感で満たされます。

では、演奏には、
「演奏者の「その人自身」も必ず表現されている」とは、
どういうことでしょうか?

今回のコラムでは、
「自分自身の音楽」について、考えていきたいと思います。

ある時のピアノのレッスンを例に考えていきます。

ピアノのシニアクラスでは、
クラシックに限らず、ポピュラーやミュージカルなど、
生徒さんがご興味のあるジャンルの曲も
取り入れながら、レッスンしています。

ある生徒さんが、
楽譜の表紙に、ステキな絵を描いて、見せてくださいました!

課題としてお渡ししていた曲は、
映画『Always三丁目の夕日』より『オープニングテーマ』です。

『Always三丁目の夕日』は、
2005年に公開された邦画で、
第29回日本アカデミー賞の最優秀賞を総なめにした作品です。

昭和30年代、
高度経済成長期前の東京の下町で、
豊かではないが、
明るくたくましく生きる人々の姿を描いた人情ドラマです。

人の優しさ、温かさが心に染みる、
懐かしいノスタルジーな気持ちになる映画です。

こちらが、表紙にお描きになった絵です。

夕日に染まる山々の下には、
新しく建ち並んでいくビル群が見え、
これからの高度経済成長により、
世の中がおおきく変わっていく予感がします。
ねぐらに戻っていく鳥たちが、
一日の終わりを一層、感じさせてくれます。

未来への希望が感じられて、明るい気持ちになります。

そして、こちらの絵もご覧ください。

生徒さんが描いた絵をご覧になった
ご主人さまが「これが、私の3丁目の夕日や」
と、お描きになった絵です!

当時の街並みがクローズアップされています。
家の前の通りでは、
昭和の人々の温かい交流があったであろう雰囲気が感じられます。
空の色のグラデーションや、
少し薄暗くなり始めた雲が、
静かに落ちていく夕日を感じさせてくれます。

優しさに包まれた安心感が感じられて、心が落ち着きます。

どちらも、
ステキな絵を描いて、見せてくださって
ありがとうございました!

このステキな2枚の絵は、一見して、
全く違う印象を受けます。
ですが、同じ『Always三丁目の夕日』

の題材から、心にイメージされたものです。

では、
この絵を描かれた生徒さんが、
ピアノ演奏する『Always三丁目の夕日』と、
ご主人さまが演奏する『Always三丁目の夕日』の演奏は、
どのようになるでしょうか?

そうですね。
それぞれが心に思い描いている『Always三丁目の夕日』が、
演奏で表現される
ことになります。

演奏では、
作曲者が楽譜に指示していることについては、
 例えば、
 拍子(4/4拍子などの曲のリズム)、
 調子(曲のキー)、
 速度記号(allgro:速く、andante:歩くくらいの速さで など)、
 強弱記号(f:フォルテ:強く 、 p:ピアノ:弱く など)、
 発想用語(cantabile:カンタービレ:歌うように など)

作曲者の意図を伝えるため、
これらの指示に従って演奏しますので、
曲の型や構成の面では、同じ曲だと言えます。

ですが、
その演奏には、作曲者の思いに重ねて、
それぞれの演奏者がイメージしているものが反映されるので、
全く同じ曲ではなくなります。

その曲には、
「演奏者自身の音楽」が表現されているのです!

それは、
「音楽を演奏することを通して自分自身を表現できる」喜び
となります!

音楽を聴いて、何を感じるか、は
「自分自身」を感じること、でもあります。

音に刺激を受けて、
自分自身の五感が共鳴して、
これまでに経験してきたことすべてが呼び覚まされます。
それが、ひとつのイメージとして形作られ、
感情が生まれます。

どの場面でも、
その瞬間に「自分自身」が感じていることを
演奏しています。

そして、それは、
同じ人が同じ曲を聴くときであっても、
聴いているときの場所、年齢、体調、それまでの経験など、
その時の演奏者の状態によって、
生まれてくる感情は、
ひとつとして同じものはありません。

音に刺激を受けて、五感が共鳴して、
そして、
自分自身の中に、
どんなイメージが形作られたのか?
どんな感情が生まれてきたのか?

その瞬間ごとに、しっかりと感じとって、
作曲者の思いに、「自分自身のイメージ、感情」を
重ね合わせ、混じり合わせ、共鳴させていくと、
「自分自身の音楽」が生まれます。

それが、
「音楽を演奏することを通して自分自身を表現できる」喜び
となるのです!

皆さんの『Always三丁目の夕日』は、
どんな景色になるでしょうか?

皆さんも、
その瞬間の「自分自身」を感じながら、
演奏してみてください。

そして、おおきく感動してみてください。

今回のコラムにもお付き合いいただき、
ありがとうございました。
次回のコラム『ちいさな感動おおきな感動』
よろしくお願いします。

梅谷音楽学院 講師 IKUKO KUBO (^^♪

大阪府吹田市千里丘の音楽教室です。 幼児(3歳)からシニアの方まで、随時ご入会を受け付けています。 現在、個人レッスンによる「ピアノ」「声楽」「チェロ」「ソルフェージュ(視唱、聴音、楽典など)」の4科目を開講しており、初心者、経験者、趣味で楽しみたい方、また音楽大学・音楽高校を目指したい方など様々な生徒さんが在籍されています。 ご一緒に音楽を楽しみませんか。
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